主訴 ねんざするといつも足関節の内側がすごく痛いんです。いつもしばらく痛みが続くんです
主訴 ねんざするといつも足関節の内側がすごく痛いんです。いつもしばらく痛みが続くんです。
現病歴
数週間前にサッカー中に内反ねんざをしてから痛みが足関節内側にあり長引いているので来院。
日常生活での足関節の不安定感はありません。
可動域制限は認めません。
足関節を内反ねんざした際に足関節の内側に痛みが出現することはよく見かけます。
前回の投稿の記載の繰りかえしにはなりますが、
内反ねんざのあとに足関節内側痛が続く場合に考える病態
- 足関節三角靭帯損傷
- 距骨離断性骨軟骨炎(距骨内後側)
- 足関節内果疲労骨折
- 足関節内果副骨障害ないし内果偽関節
- フットボーラーズアンクルの骨棘障害(内側)
今回は足関節内側の三角靭帯には圧痛を認めませんので①は否定的です。
検査結果に進みます。
レントゲン所見 図1
レントゲンでは足関節内果には亀裂を認めませんので③の疲労骨折は否定されます。
レントゲン正面像でも距骨に異常もなく②距骨離断性骨軟骨炎も否定されます。
骨棘もないので⑤フットボーラーズアンクルも否定されます。
最後皆様も画像みれば内果に大きな余分な骨がでておいることを気づかれると思います。
今回は④足関節内果副骨障害ないし内果偽関節が原因のようです。
副骨と内果偽関節の見分け方ですが、シンプルであることが多いです。
副骨は形態が丸いです。偽関節は骨折のごとくわれているのが想定できる形態です。
CT画像 図2 を示します。
CTでは内果部は骨折を容易に想像つく形態であり、今回は内果偽関節(以前に骨折を起こして治癒しない状態で経過してきた)
と判断しました。
MRI像 図3を示します。
MRI STIR画像(脂肪抑制画像)では内果偽関節部に高信号を認めて炎症ないし 不安定であり摩擦による炎症があることを想定させます。
またSTIR画像で内果周辺の骨内や軟部組織内には異常信号は認めませんので踏み込み時の内側の痛みは内果偽関節部が原因と考えました。
治療計画
ご本人に今までの経過をお聞きすると 高校時代からねんざがひどい時は決まって足関節内側に痛みがでていた経歴があり、ご本人も競技を続けるので
治療希望になりました。
内果偽関節の対処ですが、骨片が小さいものであれば除去をしています。
一番治療方針の中で骨接合するかを決めるポイントはレントゲンやCT画像の正面像で骨片を除去してもankle mortiseを保てるかという観点です。
足関節の構造の復習です。(図説 足の臨床から引用)
関節の構造は
距骨の外壁を脛骨と腓骨が挟み込んでほぞ接ぎ状となり安定が保たれている。
ほぞ接ぎ=ほぞ穴(mortise)である果間関節ゕに距骨滑車のほぞ(tenon)がはまりこんで安定性が保たれる。 図4
足関節は脛骨内果と腓骨によりほぞ鍵構造をしていて骨性に安定します。今回の症例をみていただければわかるように、もし骨片を除去すれば
骨性のほぞ穴構造は失われるのがわかると思います。今回は骨接合としました。 図5
★これはスポーツ業界のドクターや足の外科の専門にするドクターは同感だよといっていただける内容を書きます
この内果の偽関節は癒合率が悪いので手術といっても慎重さが求められますし、選手への事前の話も必要なのです。癒合も3か月では難しいこともあるので
私個人的にはこの手術をうけていただく選手には6か月くらいは慎重に術後の経過(勿論競技復帰も6か月以降の可能性あるとお話しした上で手術に踏み切っています)をみせてくださいとお願いしています。
理由として骨片の側に問題あることが多いのです。具体的には実際のオペ中に骨片が、もろくて強固な固定ができなかったり、
偽関節部をクリーニングしていると骨がもろくて骨片が考えていたよりも小さくなってしまつたりすることが
あるのです。
今回はピンとワイヤーシステムで強固に固定できました。(脛骨の内側から骨移植をして癒合率をあげる処置もしています) 図6
術後は順調に経過して3か月で癒合はえられ、徐々にあげてゆき5か月で競技レベルに戻りました。その後4年間問題なくプレーしています。
偽関節の場合 痛いんなら固定してくっつけてもらえば、なんて考えがちですが、
なかなかシンプルに癒合しないので
競技選手であればあるほど
主治医とよくよく相談をして、
もし手術をうけるなら
タイミングを選んでいただければと思います。