【足首のねんざの合併症】後方インピンジメント症候群
【足首のねんざの合併症】
足関節ねんざの合併症で一番多いといっても過言でないものは
アキレス腱の奥にある三角骨ないし後突起(stieda結節)が、脛骨という骨に挟まれ炎症を起こす『有痛性三角骨』です。足関節をキックの姿勢にするとアキレス腱の奥に痛みがでるのが特徴です。
現在では三角骨のような骨以外の原因も確認されているので総称して後方インピンジメント症候群といいます。
典型的なエピソードは
内反ねんざをして足関節外側靭帯損傷の2度以上を受傷した場合の回復過程で発覚します。
その1)つま先ちするとアキレス腱の奥に痛みが痛みがつよく充分できない
その2)ランニングするとアキレス腱の奥に痛みがありそれ以上早くスピードで走れない
その3)ボールキックでつま先にあたるとアキレス腱の奥に痛みが強くしっかり蹴れない
症状のでかたの共通項は足関節底屈位(図1)の姿勢で、アキレス腱の奥に痛みが出ることです。
以前は、主として先述の骨が原因になっていることが広く知られていました。
しかし最近ではこうした骨以外にも、足関節後方の様々な靭帯などの組織が挟まることで痛みがでることも分かってきており、
それらをひっくるめて『後方インピンジメント症候群』または
『骨性後方インピンジメント症候群』
『軟部組織性後方インピンジメント症候群』
といわれます。
今回は、もっとも日常診療で遭遇するねんざ後の『後方インピンジメント症候群』のうちでも特に典型的な、三角骨が原因となった症例を紹介します。
患者:高校競技選手(空手) 全国レベル
主訴:左足関節痛
現病歴:
3週間前に練習中のキックで受傷
(本人から『キックではなく練習中にねんざした際かもしれない』という旨の申告もあり)
近医整形外科を受診し、レントゲンで三角骨障害を指摘される
注射をしたが、1日目は効果あり、2日目は痛み再発しており、2回目の注射を実施するも効果がなかった
理学所見:
足関節可動域制限なし
足関節底屈するとアキレス腱の奥に痛みがでる
エコーで足関節の緩みをみるが、前方への不安定性なし
単純レントゲン画像(図2):大きな三角骨を認める
MRI画像(図3):
三角骨が足関節底屈時に脛骨と衝突して骨内に白く高信号(黄色い◌で囲まれた)を認めた
横断面では関節後方(黄色い◌で囲まれた)の母趾を屈曲させる腱の周囲が高信号を呈していて腱鞘炎も合併していることがわかる
手術所見(図4):
大きな三角骨を関節鏡にて除去
母趾の腱の周囲は骨がでており、母趾屈筋腱を狭窄し腱鞘炎を起こしていたため突出している骨を除去し狭窄を解除した
術後プロトコール:
歩行は翌日から痛みない範囲で許可
足関節可動域訓練開始
3ヶ月からフルにキック許可した
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
<豆知識>
後方インピンジメント症候群
Posterior Ankle Impingement Syndrome (PAIS)
後方インピンジメント症候群の原因 図5
①骨性インピンジメント(診断は容易である)
三角骨障害
距骨後突起のインピンジメントによる炎症性疼痛
後突起の骨折
遊離体
②軟部組織性インピンジメント(診断は困難 画像でも特徴ある所見なし)
長母趾屈筋腱鞘炎
滑膜炎
果間靭帯(intermalleolar ligament)
※今までほぼすべてが骨性因子(‘三角骨やStieda結節)が原因とされてきた。
ここ数年で軟部組織性の後方インピンジメントが報告され、思ったよりも臨床現場では遭遇している。
臨床治療
60%が保存治療で改善する(4~6週間)
保存治療に抵抗する場合には関節鏡にて除去します(図6)
術後指示
<荷重について>
手術から4日間は松葉杖で完全免荷
4日以降で痛み許す範囲で荷重開始
<可動域について>
手術から4週間までは単なる自動運動のみに限定
4週から6週まで自動運動で積極的に行う程度
6週以降で他動運動もつけての可動域訓練
スポーツ復帰は8週以降で、可動域と最大底屈位での疼痛が消失した時点
- ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
Youtube配信しています!!
PTATの松崎先生を中心に動画撮影頑張っています!
↓↓↓↓↓
https://www.youtube.com/channel/UCsR3UzT7AhzLlHTLJpMI9cw
体幹トレーニングや各疾患時期に応じたリハビリテーションや
競技別のアスレティックリハビリテーションの動画を配信しています。
みなさん是非ご覧下さい!!